PAGE2020印刷展示会 2月6日 視察レポート

PAGE2020印刷展示会 2月6日 視察レポート

2020年で33回目を迎える、日本最大級の印刷メディアビジネスの総合イベントに参加しました。様々なメディアが登場し、紙媒体がただ単に印刷するだけでは関心が薄れていく中で今回のテーマ「デジタル×紙×マーケティング for business」で体験した中から、収益を高める新たな取り組みなどを紙媒体への思いを込めてレポートしたいと思います。

デジタルマーケティングにおける紙媒体の動向

昨今の情報の伝達手段は紙媒体やテレビなどのマスメディアによって一斉かつ一方的に情報伝達し、広く周知する事を目的としたものがあるが、ネット上の口コミやSNS、有名ブロガーやYouTuberなど双方向性のあるインターネット情報の拡散力も侮れない状況になっている。
 この様な状況の中、インターネット上のページの価値感はGoogle Analyticsなどでコンテンツの充実度を明確にデータで評価される様になり、評価の高いサイトではアドセンスやアフィリエイトなどで広告収入に結び付けるビジネスが活発化している。
 例えば、Twitter でフォロワー数が222万人以上のメジャーリーガーのダルビッシュ有さんがブログやツイッターで普段の生活で何気なくハマっているモノ(トレーニング方法や道具)をツイートした場合は、情報が新鮮でユーザーとの距離感も近く、上手く利用出来れば低予算で効率の良い宣伝効果を期待できる。

twitterの波及効果

 また、インターネットによる情報配信は広告物に限らず学校の授業等で使用する資料はクラウド上からアップロードしたものを使用し、名刺代わりに簡単な自社サイトを立ち上げる企業も見られる。
 今回のPage2020では様々に登場した情報ソースを紙媒体が AIを導入し、どの様にビジネスに展開しているのか確認し、今後の印刷業界の動向も探りたいと思い参加した。当日の様子を時系列でレポートします。

セミナー受講「AI×印刷」ビジネスアイディアソン
10:00~12:00

page2020のセミナーの様子

DTPエキスパート認定者特典を利用し受講料無料で参加。
(通常参加費¥16,500→無料)
全部で 3部構成
・1部 Aiの基礎知識 60分
・2部 Ai導入の実例 20分
・3部 3名の有識者によるパネルディスカッション 40分

1部 Aiの基礎知識

受講した内容からAiと呼ばれているモノの思考回路を下記2点に分類できる。
①「ルールベース」
 …if文などの従来から存在する条件文を多数組み合わせたもの
②「機械学習」
 …大量のデータを元に、そのデータのパターンを発見し学習する

現在話題になっているAiは②「機械学習」 である。
「機械学習」が可能になった背景には膨大なデータ量を処理出来る環境になったことが大きく影響しているが、人間が猫とイヌなどの似たような動物同士の外観の違いを言葉だけで明確に説明する事は意外と難しい。これはAiも同じで

人間が上手く説明出来ないモノはAiも判断できない

…という事だった。つまり、Aiは今まで人間が見過ごしていた大量のデータの中から視覚化(アウトプット)出来ても最初から何もデータがない状態(人間が明確に説明出来ないもの)からAiは何も出来ないという事だった。
Aiで囲碁や将棋、オセロが強いのは、スタート段階(ゲームのルール)とゴール(勝負の着き方)を人間が言語で明確化している点にある。

<結論>今後の Aiと人間の関連性について
① 下図の様に従来のPDCAを人間とAi(機械)が役割分担し、高速に回す。
② Aiは次のアクションをする為の情報を視覚的に明確化出来るので、ソリューション営業(提案型営業)などの良い販売促進ツールになると思われる。

Aiと人間の役割

2部 Ai導入の実例

冒頭で印刷業界に特化したAiの導入例は見当たらないという説明があった。
原因としては他の業界に比べて印刷業界が閉鎖的でAiを構築する為の有効なデータを収集できず、データサイエンティストも印刷業界のノウハウが把握出来ていない点にある。
 しかし、開発途中のプロジェクトになるが、トロント大学(カナダ)が空手道場のチラシをAiを利用して自動的にレイアウトするシステムの紹介があった。

Aiのデザイン例

デザインのキーになる空手家のシルエットの大小によって自動的に数種類デザインし、更にそのデザインごとに認知指数(内容の分かり易さの度合いを数値化)を各デザイン案の下に表示している。
<印刷業界におけるAi導入の課題>
・案件の1件1件がオーダーメイドに近いので、データとしてパターン化しづらい(1つのパターン作成に1万個のサンプルが必要になるケースがある)
・業界全体に共通する作業工程の課題が明確化していない。
 全工程を技術面で統括するプリンティングディレクターの活躍が望まれる

3部 3名の有識者によるパネルディスカッション

・Ai構築に必要なシステムと費用
 Google AiのTensorflow(無料)を使用することから始める。
・印刷業界でマーケティングや販促でAiを生かすにはお客様の課題解決の手段に使用する。
 例えば、 CookPadなど素人がスマホで料理を撮影した画像データをAiでより高品質な画質に変換し、Webや紙媒体に生かすなど。
・サブスクリプション制デザインの運営方法とAiの関連性について
 ①予め用意された膨大なサンプルデータの中からお客様の希望に沿ったものを検索して候補をあげる。
 ②お客様の希望に沿って大まかなレイアウトをAiで組み上げて、デザインは人間が行う事で省力化している。

tensorflowの紹介

※Tensorflow(テンサーフロー)は、Googleが開発した、深層学習(ディープラーニング)・機械学習のライブラリです。Tensorflowはオープンソース(Apache 2.0 license)で公開されており、個人/商用問わず、誰でも無料で利用することができる。 https://www.tensorflow.org/

展示会見学
12:00~17:00

一般社団法人ジャパンイーブックス研究会 様
西日本中心に全国28都道府県に広がる印刷会社のネットワーク。
地域の様々な課題やニーズに対し、全国のメンバーが企画・制作の実績、営業ノウハウや技術を共有している。
今回はイーブックの展示に特化していたが、イーブック制作は大きな費用が掛かる為、比較的予算に余裕がある自治体をターゲットに各地のメンバーの実績を強みに広範囲に営業活動されていた。 デザインに凝る必要のない案件は、テンプレートのWEBデザインを無料で提供し、受注獲得に繋げていた。
自社もグローバルな活動をするグループの一員になれるように技術力を高めたいと思う展示だった。

土山印刷 様
コカコーラ社の棚割りのマーケティング手法をカタログ制作の誌面配分に活用していた。誌面配分のシステムは下記のアルゴリズムによってPOSの売り上げデータから自動的に商品の優先順位を決めてレイアウトへ反映する仕組みになっていた。すでに村田製作所様などのボリュームのあるカタログにも対応していて、 お客様のレイアウト指定や自社のレイアウト作業者の工数削減に貢献していた。

リコー 様
昨年に続き蛍光トナー印刷をメインに五感に訴えるメディアとして「香りサイネージ」の展示があった。
デジタルサイネージに近づいた人をセンサーが感知して、コーヒーや焼きたてのパンの香りを放出し、今までよりも足を止めてもらい情報を入手して頂く試みがあった。香りは1ヶ月持続するとのこと。

リコーのブースの様子

コニカミノルタ 様
参考展示ながら、お客様のサイトのPVやSNSのデータをもとにテンプレートで用意したデザインに自動でコンテンツの収集と流し込みを行い、更に配布するターゲットを絞込みお客様に提示するシステムがあった。
また、コピー機の排出部直前にカメラユニットを設置し、プリントが通過する度に色調補正と表裏見当合わせを自動で行い、高品質なプリントを長時間可能にしていることを売りにしていた。(昨年の展示では8時間耐久プリントというイベントも実施していた。)
カメラメーカーの長所と先進性を兼ね備えた、見応えのある展示だった。

コニカミノルタのブースの様子

富士ゼロックス 様
富士フィルムグループのブースの奥にゴールドとシルバーのトナーが使えるコピー機が2台展示されていたが、来場者は富士フィルムの刷版システムに集中していた。なお、富士フィルム社のブース以外では 富士ゼロックス社製のコピー機はFFGS(富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ)の名称で紹介されていた。今後は社名を「富士フイルム ビジネスイノベーション」に変更される。

東京都製本工業組合 様
コストや短納期よりも実験的な芸術的な上製本が展示され、技術力の高さをアピールしていた。
糸かがり製本の折丁の背をあえて剥き出しにしてデザイン性を高めた物や表紙貼りに壁紙など様々な素材を使用もの、レーザーカッターによる表面加工、焦げ目を付けたものなどがあり、デザインフェスタのように楽しめる展示だった。
かなり特殊なつくりをしている本が多かったので、製本の作り方を聞いているお客様が多く、技術力の高さを効果的にアピールしていたと思う。

大日本法令印刷  様
制作現場の声を反映しInDesignで編集作業中にリアルタイムで修正箇所をチェックするプラグインを展示。通常の検査機は修正作業を終えてから、作業前と比較するものだったので、かなり使い勝手が向上したものだと思った。

亜細亜印刷 様
私が携わっている仕事よりはるかに難易度の高い文字組を拝見させて頂いた。インデザインをメインに使用しているとのことですが、組版オペレーターの技術力を売りにした貴重な展示例です。

今後の紙媒体の価値感について

デジタルデータを高度に扱えるようになりPDCAを高速に回すシステムを提案している企業があったが、現状は蓄積したデータに基づく未来予測をAiではなく人間が行っていた。しかし、従来型のお客様からレイアウト指定やデータを支給されてから作業する受け身の型から、お客様のデータを上手く利用し、積極的に提案する型へと進化し、Web to Printへ結び付ける動きが今まで以上に多く見られた。

Page2020の感想

PAGEは商品の展示だけではなく、それぞれのブースに会社を代表するスペシャリストがいらっしゃいます。自分の仕事に応じてアドバイスをもらえたり、ディスカッション出来る貴重な機会になりました。是非、 皆さんも 参加して良い刺激を頂いてみてはいかがでしょうか?